
アプリ再来訪が10倍に──UGC活用で運用工数削減と再来訪を実現する方法とは
TieUps株式会社 代表取締役・小原史啓インタビュー
本記事では、TieUps株式会社代表取締役の小原史啓に、企業が直面するアプリ運用の課題とその解決策について、インタビューを行いました。
アプリ運用の課題と背景
── まず、当社が最初に注目したアプリ運用の課題は何でしょうか?
小原:
よろしくお願いします。最初に見ていた課題は、やはり「通知に載せる中身を継続して作るのが難しい」という点です。
背景には、広告費の高騰や媒体の変化があって、顧客の行動が成熟してきていることがあります。新商品やセール情報だけではユーザーに届きにくくなっているんですね。だからこそ、顧客リソースを活かした共創が重要になります。短期で数字を作る小手先ではなく、中期で効く仕組みをどう構築するか。ここが今の焦点だと思っています。
── そのうえで、解決策としてコミュニティに着目した経緯を教えてください。
小原:
そうですね。出発点は、企業と消費者を深くつなぐ手段をどう設計するか、でした。その過程で「アプリの通知コンテンツが枯渇している」という声をたくさんいただいたんです。コミュニティなら自然にUGCが生まれるし、その質も高い。さらに権利処理を前提に設計しておけば、安心して再利用できる。結果的に、アプリ集客にも大きな効果を持つと実感するようになりました。

獲得できるUGCと具体例
── 具体的には、どんなUGCが生まれやすいのですか?
小原:
メーカーの場合は「購入後のストーリー」が多いですね。使いこなし方や、次に必要な関連商品への気づきなどがユーザーから自然に出てきます。先行ユーザーの知見がシェアされることで、他の人の活用度が高まるんです。一方で商業施設は毎日情報が動くので、新作スイーツやイベントといった鮮度の高い話題が次々にUGCとして投稿される。企業がわざわざ準備するよりも早く、魅力的な情報が集まる点は大きな特徴だと思います。
――特に印象に残っているUGCのエピソードはありますか?
小原:
たくさんあるので選ぶのが大変ですね…。とあるクライアントのサービスで「母の誕生日をどう祝うか」という相談投稿があったんです。そこにスタッフや他のユーザーから提案が寄せられて、結果的にすごく素敵な体験になったとシェアされた。こういう裏側のストーリーは、企業発信では絶対に作れないんですよね。消費者同士だからこそ共感が生まれる。まさにコミュニティだからこそ実現できる、感動的な瞬間でした。
。
アプリ運用への効果
――アプリ運用工数削減の観点では、どの仕組みが効きましたか?
小原:
UGC活用機能を仕組み化できたのが大きいですね。
投稿時に著作権や肖像権の同意を取得し、その後は管理画面で検索・選定・ダウンロードまで一気に進められる。UGCを採用したときには投稿者に通知も届くので、ユーザーも安心できます。以前は素材収集や許諾確認に膨大な時間を取られていたのですが、今はかなりスムーズになりました。その結果、少ない工数でも質の高い発信を回せるようになっています。
――アプリへの再来訪の導線としてはどのように機能していますか?
小原:
そうですね。まずコミュニティ内で「いいね」が多い投稿が自然に浮かび上がります。次に、それを「ピックアップ投稿」として全会員に届ける。そして最後に、特に反応の良かったものをプッシュ通知でコミュニティ未参加のユーザーにも配信する。この三段の流れがあることで、共感性の高いUGCを効率的に拡散し、再来訪につなげることができています。

実例から見る効果
――成果面ではどのような数字が出ていますか?
小原:
ほとんどコンテンツがなかった企業が、導入後に二桁〜百倍規模まで増えた例があります。さらに、UGCを活用したプッシュ通知ではクリック率が最大で10倍近く伸びたケースも。もちろん文脈によって変わりますが、実感値としては大きいですね。ただし、数字だけを追うと本質を見失います。定性的な価値とセットで捉えることが重要だと学びました。
――広告や一般SNSと比べたとき、コミュニティ施策が優れる点は?
小原:
一番は「同じ立場の人の声」への信頼です。広告や企業アカウントだとどうしても壁がある。でも同じ体験をしたユーザーの言葉には信用がある。その信用が共感を生み、行動を動かすんです。これはコミュニティでしか得られない価値だと思っています。僕自身の経験からも、こうした信頼性は中期で効く施策の核になると感じています。
――効果測定はどこから始めるべきでしょう?
小原:
まずはプッシュ通知のCTRです。通知を送ったときにどれだけ開封・クリックされたかを見る。その後のアプリ内回遊まで追えば、改善のヒントが見えてきます。DL数やMAUだけでは不十分です。僕が大事にしているのは、ユーザーの「推し行動」がどこで生まれているかを把握すること。そこを測定することで持続的な改善につながります。

今後取るべきアクション
――今後の進化について、この先10年をどう見ていますか?
小原:
私たちは「コミュニティCXプラットフォーム」から、「推し行動促進プラットフォーム」へ進化しようとしています。AIでユーザーの期待行動を判定し、レビューの具体性や写真の質をスコア化する。そのスコアをポイントに反映させ、より良いUGCが循環的に生まれる仕組みをつくる。テクノロジーと共創で、この先10年、AIO時代の中心に立てるよう挑戦していきたいと考えています。
――最後に、アプリ運用や集客に悩む企業へのメッセージをお願いします。
小原:まずは今ある体制でコンテンツを丁寧に整えることから始めてください。ただ、量と質を一気に上げようとすると必ず限界がきます。外注にももちろんメリットはありますが、私たちは共創パートナーとしてUGCを一緒に育てる道をご提案したい。権利処理まで設計された仕組みを活用すれば、工数削減とリテンション向上を同時に実現できます。迷ったら小さく始めて、早く学ぶことが大切です。


