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開発の背景 〜なぜ推し行動促進にベットしたのか〜

TieUps株式会社CEOの小原史啓です。

プロフィールまとめサービス「lit.link(リットリンク)」は、おかげさまでユーザー数が350万を超えました。
そして本稿の主題である法人向けコミュニティSaaS「タイアップス」は、8月26日にコミュニティとAIを活用した「推し行動促進マーケティング・プラットフォーム」(※1)へとリニューアルしました。

社名とプロダクト名が紛れやすいため、以降は社名を「TieUps株式会社」/プロダクトを「タイアップス」と表記します。
ここでは、なぜ私たちが「推し行動促進」に行き着いたのか――その背景と学びを、私自身のキャリアの原体験からお話しします。

結論として、私たちが目指しているのは、「顧客の力でマーケコストが0円になる」世界です。

実際に私たちが運営しているプロダクト、リットリンクも過去に累計300万円の投資で、350万ユーザーを達成しており、実際にそれは可能だと考えているのです。

小原(おはら)のキャリア

  • 広告代理店:デザイナーとしてキャリア開始(販促物・クリエイティブ制作)
  • ノジマ:移動通信事業のマーケ部で店頭販促・キャンペーン運用から店舗運営までを広く担当
  • マクロミル:調査設計~分析・示唆出し、プロモ設計まで上流から下流までを一気通関で担当
  • GENEROSITY(旧SnSnap):創業期1号社員として外資系ラグジュアリーブランドのプロモ事業開発
  • 2020年 TieUps:国内最大級のクリエイター向けツール/コミュニティ事業を立ち上げ・推進

原体験:止められない「刈り取り施策」への違和感

顧客の力でマーケコストが0円になる世界を目指し、推し行動促進に行くつくにあたった僕の原体験をまずお話しさせてください。

いまから20年〜11年前、当時在籍していたノジマでは移動通信部門を担当し、当時まだガラケーが主流だった時代からiPhoneの登場で世界が変わっていくまでを、端末やサービスを販売する立場で寄り添っていきました。

現場で販売スタッフや店長などの経験をした後、本社で担当した部署はMK部(マーケティング部)という名前でした。

マーケティングというと本社から間接的に空中施策のみ打つ場合が多いと思いますが、実際には自ら販売してお客さまの立場に立って顧客体験を掴み、スタッフとロールプレイング研修などを行った上で本部に行き、データ分析、仕入れ、チラシ 、ポイント会員管理、 POPなど、顧客体験に関わる部分はすべてやり切るいうスタイルでした。

実際に打った施策の成果を現場でダイレクトに確認することが、仮説や数字感覚を養う上で非常に良い経験になりました。

そのような環境下でお客さまとの1to1の接点と、空中戦施策を行ったりきたりする中で、チラシやセールなどの刈り取り施策について「これって、本当に継続しないと売り上げは維持できないのだろうか?」という疑問が常々沸くようになりました。

Web2.0とコミュニティマーケティングの萌芽

ドラッカーは「マーケの目的は販売を不要にすること」と言います。

でも現実にはそんな製品や仕組みはなかなか作れず、買っていただきたくて一方的に有利な情報を発信してしまう。 私もそのストレスを抱えつつ、目の前の予算達成に必死だった一人です。

そんな中、2010年ごろから日本でもWeb2.0が広がり、閲覧中心の一方向から、コメントや交流が生まれる双方向の体験へ。mixiやTwitter(現X)、Instagramが台頭しました。

SNSで長期的な顧客関係を築けるのでは?という期待が高まる一方、実際は「バズ狙い」や、ほぼステマ的なインフルエンサー施策が目立ち、手を取り合って価値を積み上げるマーケにはなり切れない。押し付けがましい手法も蔓延しました。

転機は2017年ごろだったと記憶していますが、Discordの流行をきっかけに、ゲーム・音楽・クリプト(Web3.0)でコミュニティを活用し、ユーザーと共に市場を作る事例が見え始めました。 「推し活」や「プロセスエコノミー」というキーワードでノウハウが言語化され、日本でも関連SaaSが次々登場します。

理想が形になってきたのは嬉しい一方で、まだ発展途上だとも感じています。
とくにコミュニティマーケで「関わった消費者が生み出した価値をどう定量化するか」は、いまも課題のままです。

起業、toCアプリの挑戦と学び、そしてSaaSへ

2020年4月、TieUpsを立ち上げました。 社名は『お金2.0』の佐藤航陽さんが創業したMetapsにインスパイアされ、「お金ではなく個人の共創経済をつくる」という思いを込めています。 創業まもなく国内最大級のプロフィールツールをリリースし、才能あるクリエイター/フリーランサーをつなぐ――というテーマのもと登録が順調に拡大し350万ユーザーを突破しました。 コラボを生む打ち手として、lit.link互換のtoC向けコミュニティアプリ「WeClip」を選び、2021年10月にブラウザ版、2022年12月にアプリをローンチしました。
著名インフルエンサーの力も借りてユーザーは15万超まで伸びましたが、2023年に終了。
世界的SNSに慣れたユーザーにマイナーSNSを選んでもらうには、当初の想定どおり“ニッチで継続率の高いテーマに絞る”べきだったのに、lit.linkのトラクションで押し切れると思ったのは甘かった――と痛感しました。残ったシステム資産を活かし、法人向けコミュニティSaaS「タイアップス」を立ち上げ、この経験は後の企業向けコミュニティ支援に大きく効いていきます。

「タイアップス」は2020年4月にリリースし、ナショナルクライアントを中心に契約を拡大。 後発ながら「ユーザーが楽しめるゲーミフィケーション」と「運営負担を減らすマーケ自動化」で差別化できました。
ただ業界全体で長く、“顧客共創は大事だが成果をどう定量化するか”が未解決のまま。そこに2024年のAIブーム、GPT-4以降の実装研究が追い風となり、私たちもコメント返信など運営アシスト機能を次々トライ。 AIは万能ではないが、人を補助し、複雑なものを抽象化して捉えるのが得意だと分かってきました。

その理解を土台に、コミュニティマーケの核心課題――共創の可視化と定量化――にAIで挑み、行き着いたのが「AIを活用した推し行動促進マーケティング」です。

AIで「定性的な熱量」を見える化する

僕たちがたどり着いた答えは、AIで“定性的な活動”を数字に置き換える「推し行動促進マーケティング」です。
企業が増やしたい“推し行動”をあらかじめ定義して可視化し、関わるお客さまの行動を気持ちよく促していきます。

たとえば、レモンサワー×揚げ物の食べ合わせが市場拡大に効くなら、そのテーマの投稿を内容の充実度・写真の出来・推定影響力などでスコア化します。すると、実際にその行動をとる人が増え、影響も加速します。これまでのように投稿数やフォロワー数といった“見える数字”だけではなく、これで初めて投稿の「中身」やクオリティまでマネジメントできるようになります。

TieUpsでは、このAI評価を企業とユーザーで共有し、共創を促す運用プログラムとして仕立てています(ビジネス特許を申請中)。この20年でネット広告は可視化により効率を上げましたが、そのぶん短期的な指標に振れやすくもなりました。

言葉や体験の“中身(定性)”を数値で見える化し、長く効く価値づくりにつなげる。これができれば、短期の数字に振り回されず、中期で効く施策を設計しやすくなります。

常識を変える:刈り取りから「育てる」へ

デジタル広告は数多くの指標を可視化し、効率を高めてきました。一方で、その“見える数値”に引きずられて場当たり的な刈り取りへ傾斜しがちでもあります。
私たちが目指すのは、セールや告知に過度に依存せず、企業が望む理想的な活用・推奨の文脈(=推し行動)をコミュニティとAIで設計し、育て、広げること。
それこそが、ドラッカーの言う「販売を不要にする」
に最短で近づくやり方だと信じています。

社内プレ実験では、導入前後で売上が約4倍に伸びた事例も確認できました。
※あくまで社内検証のため、業種・文脈により効果は異なります。

タイアップスの現在地とこれから

タイアップスは、ユーザーが楽しめるゲーミフィケーション、運営負荷を抑えるマーケティングオートメーションを核に、“推し行動”の定義・評価・運用をワンストップで回すための実装と運用オペレーションを提供します。

コミュニティの熱量(定性)をAIで見える化(定量)し、企業と生活者が“ともに育てる”関係を、中期で成果が見える形に落とし込む――私たちが長年探してきた「中期の手」を、いまプロダクトとしてお届けできる段階に来ました。

おわりに

私たちTieUps株式会社は、刈り取り依存からの脱却と、売上以上の顧客価値づくりに真正面から取り組みます。

もしご関心をお持ちいただけたなら、お問い合わせフォームよりぜひ資料をご請求ください。御社の「推し行動」設計から伴走いたします。



(※1)用語補足:「推し行動促進マーケティング・プラットフォーム」

コミュニティとAIを用いて、ブランドにとって望ましい顧客の推奨行動(投稿・参加・紹介・共創など)を定義し、内容ベースで評価(AIスコアリング)し、運用プログラムで継続的に促進するための仕組み。従来の量的KPI(件数・到達)に偏らず、文脈と質を評価軸に含める点が特徴です。




小原史啓
小原史啓
広告代理店でデザイナーとしてキャリアを開始し、販促物やクリエイティブ制作の実務で基礎を固めました。ノジマでは移動通信事業のマーケ部にて、店頭販促・キャンペーン運用から店舗運営までを横断して担当。マクロミルでは調査設計〜分析〜示唆出しを通じ、プロモーション設計まで上流から下流を一気通貫でリード。GENEROSITY(旧SnSnap)では創業期1号社員として外資系ラグジュアリーブランドのプロモ事業開発に従事。2020年にTieUpsを創業し、国内最大級のクリエイター向けツールとコミュニティ事業を立ち上げ・推進中。